乃木オタ大学生の日記

2X歳、男。はだサマ新規。真夏さん、れんたん推しです(ロリコンではない) ラノベとかも読みます

乃木坂ロワイヤル 七瀬編2

七瀬編2

「これからみなさんには殺し合いをしてもらいます」
スピーカーから無機質な合成音で作られた言葉が流れてくる。
「...は?」
一瞬教室が静まり返った後、一気にざわつき出す。
「どういうこと?」「殺し合いって...」「ドラマの撮影?ドッキリ?」
様々な言葉が飛び交い、収集がつかなくなる
「はい、静かに静...」「ドッキリか!もう心臓に悪いな〜」
誰かがそう言い、落ち着きを取り戻し始める教室。
「残念ながらドッキリではありません」
「またまた〜うちらを嵌めようとしてもそうはいかないよ?受験生なんだし、そんなのに付き合ってる暇ないって」
そう言うのは私たちの中では成績優秀で、難関大学を目指している里奈。
「もうドッキリって分かっちゃったし、いい反応なんて撮れないから早くネタばらししてよ」
「これがドッキリでないという証拠をお見せしましょうか?」
「あーもう、そういうのいいから」
里奈が少し苛立ったように返す。
「...」
私の頭の中で嫌な予感が横切る。
(本当にドッキリ?それにしては大掛かり過ぎる気が...ドアの改造なんて一朝一夕で出来ることじゃないし)
そんなことを考えていると
「ーっ!?」
突然里奈が痙攣し始める。そして、少し離れた私の席からでも分かるくらいに血の気が引いていく。一瞬戸惑って誰も動けなくなる。
「里奈!どうしたの!?」
近くにいた日芽香が声をかけて近寄る。しかし反応はない。その内に里奈の痙攣が止まる。
「里奈...?」
日芽香が声をかけながら肩を叩く。里奈の体が傾いていくのがスローモーションのように見えた。再び一瞬誰も動けなくなる。
「里奈!!」
日芽香と、その近くにいた若月も駆け寄る。
「嘘...」
若月が思わずといったように声を上げる。
「脈がない...」
「そんなバカな」
一実が赤ちゃんがいやいやするように首を振る。
「そっか!里奈も仕掛け人だったんだ!手が込んでるな〜確かに勉強頑張ってる里奈がこんなのに手を貸すと思わないし、効果は絶大だったけどね」
笑って誤魔化そうとする一実。
「一実」
そんな一実に非情な現実を告げる若月。
「これはドッキリじゃない。この里奈はみんなが知ってる里奈だし、自分で脈を止めることはできない」
「その通り」
スピーカーから音が流れ、思い出したようにみんながそっちを向く。
「お分りいただけましたか?あなた方の首についている首輪には致死性の毒が入っていて、こちらからあなた方をいつでも殺すことができます。これでもまだ分からないのであればその方々には順次死んで頂くことになりますが」
黙り込むクラスメイト達。
「物分かりがよろしいようで結構。それではルール説明に参りましょうか」
私たちが何も言えない間に、話が勝手に進行していく。みなみが頑張って泣き声をあげないようにしているのが視界の端に入る。
「ルールはいたってシンプルです。誰か一人になるまで殺し合ってもらう。古き良きバトルロワイヤルですね」
「古き良きって」
だが似たような話は私も本で読んだことがあった。
「ですが、それだけでは面白くないので新しくルールを追加させていただきます」
「面白くない...」
誰かが思わず呟く。それを無視して無機質な声が続ける。
「全員に一つずつ条件を与えます。その条件がクリアできれば最後の一人でなくとも生きて帰ることができるものとします。
つまり、一人以外が全員死ぬ、または生存しているのが条件を満たした人のみになることでゲーム終了となります。ただし、その条件は自分以外の誰かが確認することはできません。一人一人個別にこちらから条件を口頭で伝えます。条件をクリアしても特にこちらからアナウンスはしないので、しっかり自分で条件は覚えておいて下さいね」
つまり、条件が競合していない人と仲間になろうとしても、それを確認する術はないというわけだ。頭がクラクラしてくる。
「今の時刻が12:10ですので、12:15から一人ずつ5分おきに外に出てもらいます。その際、自分の鞄は持って下さって結構です。隣の部屋で条件をアナウンスし、その後どこへ行くかはお任せします。行動可能範囲は学校の敷地内で、外に出ようとするとセンサーが作動して生駒さんのようになるので気をつけて下さい。校舎の至る所に武器や食糧が配置してあります。自由に使って下さい。出る順番は名前の順で秋元さんからお願いします」
「私...?」
真夏が怯えたような声をあげる。
「はい、ちなみに順番通りに出ないとセンサーが作動してしまうので気をつけて下さい。欠席者と生駒さんの順番は飛ばして下さい」
(私は11番目、13:05からスタート。圧倒的に不利...)
みんながこんなゲームに乗るとは思いたくないが、甘い期待もできない。物語でもクラスメイト同士が殺しあっていたのだ。
(不利だけど、一実は順番が近いのは救いかな...)
順番は一実のあとに日芽香を挟んで私だ。一実の方をみると、一実もこちらをみていた。目が合い、軽く頷きあう。
(きっと一実は待っていていてくれる...)
そう考えると、心が少しだけ軽くなった。日芽香も含めて3人で行動すれば1人でいるよりは圧倒的に心強い。
「ゲームの開始は16番目の若月さんが出るのが13:30ですので、13:40からとします。それまでどこに行くのも自由ですが、武器の使用や攻撃は控えて下さい。13:40以前に攻撃した人はルール違反とし、退場して頂きます」
退場、とはつまりそういうことなのだろう。誰もなにも言えないまま沈黙が続く。
「ゲーム開始と終了のアナウンスは全校に流します。それでは時間ですので秋元さん、隣の教室に移動をお願いします。他の方は自分の席で静かに座っていて下さい」
真夏がよろめきながら立ち上がり、自分の手提げ鞄を持って教室から出て行く。ドアは電子制御になっているようだ。他の生徒達は席で俯いて震えていたり、真っ直ぐ前を見つめていたりしているが「席で静かに座っている」という指示は絶対のものとして遵守している。私自身も後ろの席からみんなの反応を気にしてはいるが、迂闊に動けないのは同じだ。
(とにかく条件次第ではあるけど...自分の条件は口頭でしか伝えられない以上、信じ合える人と組むしかない)
私はクラスメイト達とはそれなりに仲が良いつもりではあるが、やはりこんな状況下でも信じられる人となると一実くらいだ。
そんな事を考えながら無限にも一瞬にも思える時間が経ち、私が出る番がやってきた。筆記用具くらいしか入っていないリュックを背負い教室を出ると、一実と日芽香が待っていた。
「先に出た人はどこかへ行っちゃったみたい」
日芽香が暗い面持ちでいうが、想定の範囲内だ。むしろ一実と日芽香が待っていてくれただけで充分。
「条件をきいてきて、そしたら私たちもどこかへ移動しよう」
里奈が死んだ時にはうろたえていた一実だが、もう状況に適応したみたいだ。一実は普段はおちゃらけていても頭は切れる。
「うん、行ってくる」
そう言って1人で教室に入る。すると、先ほどと同じ無機質な声が流れてくる。
「西野 七瀬の条件は...」
「...」
唾を飲み込む
「24時間以上生存すること」
「...え?」
(それだけ?)と思わず聞き返しそうになる。しかし、もう用は済んだと言わんばかりにスピーカーの電源が切れる。半ば惚けたように教室を出て2人と合流する。
「とりあえず情報共有は移動してからにしよう」
一実がいう。
「どこか行くあてがある?」
「剣道部の部室。剣道場の奥にあるから見晴らしがいいところを絶対に通らないといけないんだ。だから、誰か来ても分かるはず」
「なるほど...」
そう言って一実の先導についていく。本当に一実は頭が切れる。こういうときの一実は頼もしい。一度、2人で山登りしたときに遭難したことがあり、その時も一実のおかげで助かったのだ。
幸か不幸か、剣道場に着くまで誰にも会うことはなかった。
「みんなどこにいるんだろうね...」
日芽香が呟く。やはり、先にどこかへ行ってしまったということは戦う意思は少なからずあるということなのだろう。自分も人のことはいえないが、悲しくなる。
「とりあえず情報共有しよう。2人とも条件はなんだった?」
一実が尋ねる。
「私は...首輪を三つ以上集める」
「3つか...少なくとも3人は亡くなってる人を見つけるか、倒さないとだね...」
そう一実が言う。やはり殺すという表現は躊躇われるのだろう。
(私のと難易度が全然違う...ということは)
「七瀬は?」
「24時間以上生き残る...」
「嘘だ!」
日芽香が叫ぶ
「そんなに簡単な条件なわけない!なんで嘘つくの?」
(こういうことか...)
確かに私の条件は一見簡単そうではある。しかし、それを他の人が確認出来ない以上、それを信じてもらうことは難しいという大きなデメリットも抱えているということだ。
(どうしよう...)
今更適当な条件を言っても信用して貰えるとは思えない。そんなことを考えていると
「嘘じゃないと思う」
一実が言う。
「一実...?」
「もし仮に七瀬の条件が私たちにとって危険なものだったとしたら、日芽香の条件をきいたあとで同じような難易度の条件をでっち上げることが出来たはず、それくらい七瀬の頭の回転は速い」
「で、でも。頭が良いならそこまで読んででっち上げたのかもしれないじゃん!」
「それに」
一拍空けて一実が言う。
「私は七瀬を信じてるから」
「一実...」
思わず涙ぐみそうになる。
「...わかった。私も2人を信じる。幼馴染の2人に比べると浅いかもしれないけど、そうするしかないし」
日芽香も少し落ち着いたようだ。
「それにね、日芽香には申し訳ないんだけど、私の条件もそこまで難しくはないんだ」
「そうなの?」
「うん、私の条件は24時間以上、生存している同一人物と行動を共にする。5分以上離れちゃだめみたいだけど」
「なんだ...じゃあ私だけが難しいのか...」
日芽香が思いつめたような顔をする。
「うん、だからまず武器とか食糧を集めて身を守る術を確保しよう。それから少し動いてみて、その...もし亡くなってる子がいたら首輪をもらおう」
「そうだね...私も自分の命がかかってるとはいえ、自分から殺すのは...首を切らなきゃいけないのだけでも嫌なのに」
やはり日芽香も自分から積極的に戦うつもりはないようだ。
「よし!そうと決まればとりあえず食糧とかを探さないとね。至るところに配置したって言ってたけど、ここにもあるのかな?」
「あ、それならさっきから気になってたんだけど...」
そう言って私は部室の隅にある木箱を指差す。
「この部室って相当年季入ってるけど、あれだけ真新しくない?」
「ホントだ、話に夢中で全然気づかなかった」
3人で木箱に近寄る。
「空けてみるね」
恐る恐る一実が蓋を持ち上げる。
「っ...」
中には小型の拳銃が3丁と、剣道場だからか鞘に収まった日本刀が一振り入っていた。
「本当に殺し合い、するんだね...」
改めて現実を突きつけられた感じがする。
「一実、日本刀使う?」
「いやー、真剣はちょっと使ったことないし...」
当たり前だが剣道部員でも日本刀は厳しいようだ。
「とりあえず1人一個持っとこうか...」
ご丁寧に予備のマガジンと取り扱い説明書まである。初めてでも安心というわけか。
「あ、奥の方に食糧があった。とりあえずこれ食べようか」
そういえば朝に学校に来てから何も食べていない。気付いた途端にお腹が空いてくる。乾パンと水が4つずつ入っていたので、一つを3人で分けて水で流し込む。残りはそれぞれ鞄にしまう。
「そろそろ時間かな...」
一実が呟く。
「うん、そろそろなはず」
私たちは後発ではあったけど、とりあえずの食糧と武器を手に入れただけ良かった。
「さて、これからどこに行こうか...」
そう言いながら私は思考を巡らせていく...

ー少し前ー
「高山 一実の条件は...西野七瀬を殺害すること」
「そんな...」
私は絶望した。クラスメイト達とは仲が良いつもりだが、こんな状況下でも絶対に信頼できるのは七瀬だけ、そう思って七瀬と条件が競合しないことだけを祈っていたのだが...
(このゲームを考えた奴ら、悪趣味過ぎる...)
私と七瀬が旧知の仲なのは当然リサーチ済みでの条件なのだろう。反吐がでそうだ。
七瀬と力を合わせて切り抜けるという当初の予定を崩され呆然としていると、私たちの教室から日芽香が出てきた。
「一実...待っててくれたのは一実だけ?」
「うん、やっぱりみんな自分のことが大切みたい」
なんとか平静を保って答える。
「そっか...一実もきっと私を待っててくれたんじゃなくて七瀬を待ってるんだよね」
日芽香が落ち込んだように言う。
「それもそうだけど、日芽香とも一緒に行きたいって思ってるよ。日芽香が裏切るような子じゃないって信じてるし」
「ありがとう...」
実際は、七瀬の前に日芽香がいなかったら七瀬と2人で行動していたとは思うが、そう言っておく。
(こういう、表面だけ取り繕って良い顔する所、大っ嫌い...)
と自分で思う。
「とりあえず条件をきいてくるね」
そう言って日芽香が私が出てきた教室に入っていく。
(ゲームに乗るにしても乗らないにしても七瀬と一緒に行動するのがベストな選択かな)
しかし七瀬の条件が私を殺すことだったら。そう思って躊躇してしまう。
(でも私は七瀬を信じてる)
自分自身が七瀬を殺そうかどうか迷っているにも関わらず、そんなことを考えている。
日芽香が青ざめた顔で教室から出てくる。
「...」
「きつい条件みたいだね...とりあえずここだと誰がきいてるか分からないから、あとで情報共有しよう」
そう言って七瀬を待つ...

剣道場の部室で七瀬の条件をきいたときには一切疑うことはなく、むしろほっとした。
(よかった、七瀬はそんな簡単な条件で...)
七瀬はこういう時に嘘はつかないと思っている。だから、ますます自分の条件が恨めしい。
七瀬の条件をきいたあとで、疑われないであろう難易度の適当な条件をでっち上げる。七瀬も日芽香もそれを信じたようで、心に棘が突き刺さる。
(私が生きて帰るためには、七瀬を殺すか、クラスメイト全員を殺すしかない...)
拳銃を持つと、そんな考えに頭の中が染まっていく。
スピーカーの電源が入る音がする。

「時間です。これよりゲームを開始します」